軽度認知障害患者レジストリーの構築
認知症の疾患修飾薬の開発過程において、可能な限り病態の初期段階からの薬剤使用の重要性が強調されています。そのため薬剤治療標的は、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)に向かいつつあります。現在Aβモノクローナル抗体であるaducanumabがFDAに承認申請済ですが、今後他の治療薬の臨床開発を進めていく上で必要な臨床的リソースとして、物忘れリスク外来とリンクしたMCI患者レジストリーを構築する予定です。
認知症患者の早期スクリーニング方法の確立
一般的に認知症患者はごく初期の軽微な変化を自覚していることが多く、家族等よりも早い時点で自身の異常を察知していると考えられます。そこで患者様本人の自覚症状を適切に捉えることにより、より早期の診断につながる可能性があります。そこで物忘れリスク外来を受診した患者様を対象に、どのような自覚症状が認知スクリーニングに有用かを探索する予定です。
軽度認知障害に対する心理的介入研究
これまで認知症の根本的治療薬の開発が試みられていますが、現時点で認知症を根治する薬剤の開発には多くの困難が伴うと考えられます。また認知症予防の取り組みに対する有効性を示すエビデンスが増えつつあるものの、その効果も限定的です。そのため、早期に病院を受診し認知症の診断をされたものの、有効な治療方法がないことに失望する患者は少なくありません。このような現状に対して、一旦は希望を失った患者が、「認知症とともに幸せに生きて行こう」と前を向けるような支援が今求められています。そこで軽度認知障害患者を対象に、どのような介入方法が当事者の生きる力を回復させるのかを検討したいと考えています。具体的には、当事者達によるピアカウンセリング、当事者との心理面接、疾患教育パンフレットの作成などを計画しています。
独居軽度認知障害患者に対する見守り研究
高齢化と核家族化の進展により、独居認知症患者が急増しています。認知症患者が住み慣れた環境で生活するためには、できる限り長期間在宅で生活できることが求められています。軽度認知障害~軽度認知症状態であれは、見守りや適切な声掛け等により質の高い生活を送ることが可能であるが、少子高齢化の影響もあり見守り等を実施するマンパワー不足が課題となっています。そこでアカデミアなどと共同でITを活用した見守りセンサー開発、ならびにその有用性の検証に取り組みたいと考えています。