統合失調症について|大阪精神医療センター

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統合失調症について

院長 岩田 和彦

こころの病について

こころの病は、目に見えない病気ですので理解が難しい面もありますが、ストレスの多い現代社会においては多くの方がこころの病を抱えておられます。まだまだ分かっていないことも多い疾患ですが、医学の進歩によって、人の脳の機能が次第に解明されるにつれ、いくつかのここの病のメカニズムが少しずつ明らかになってきました。
こころの病は決して特別な人だけが罹る病気ではなく、私たちは誰でもなる可能性がある身近な病気です。また病気の症状だけでなく、そこから派生して生活上の困難さを生じることがしばしばありますので、こころの病の回復には、医療だけでなく周囲の理解や支援がとても重要になるのです。
ここでは代表的なこころの病について解説します。

「統合失調症」とは

統合失調症とは、脳の機能の異常に伴って思考や感情、知覚などに障がいが生じ、自分の考えや気持ちをその時、その場にあわせてコントロールしたり、まとまった行動を行うことが難しくなる心の病で、精神科医療機関で治療を行う代表的な精神疾患のひとつです。 原因はまだはっきり分かっていませんが、脳内で情報を伝える神経伝達物質という化学物質のバランスがくずれることが関係しているのではないかといわれています。その他にもストレスや様々な要因が関与して発病すると考えられています。
厚生労働省患者調査(平成20年)では約80万人の方が統合失調症治療のために精神科医療機関で外来診療を受けていると報告されています。また一般に統合 失調症にかかる確率は100~120人に1人くらいであると言われており、決して特殊な病気ではありません。思春期から30歳代半ばくらいの比較的若い年齢層の方に発症することが多いのもこの病気のひとつの特徴です。

統合失調症の症状

統合失調症の症状は主に「陽性症状」「陰性症状」「認知障害」の3つに分けられます。しかし、以下に記す多彩な症状がすべて認められるわけではなく、どの症状が現れるかには個人差があります。

(陽性症状)

実際には聞こえない声が聞こえる(幻聴)という症状や、事実ではないことを考えそれを信じてしまう(妄想)などの症状が現れることがあります。数人が会話している声が聞こえたり、自分のことが噂されているように感じたりする人もいます。また周囲が自分を責めていると考え込んでしまうこともあります。

(陰性症状)

物事に対して無関心になったり、意欲がなくなったりします。また、生き生きした感情が湧かず、以前は楽しめたことでも楽しく感じにくくなり、とても疲れやすくなります。その結果、外に出ることがつらくなり、引きこもりがちになることもあります。

(認知障害)

注意力が低下し、物事に集中し続けることが難しくなります。記憶力の低下を感じる場合もあります。生活の計画を立てることが困難になったり、作業の能率が極端に落ちることも少なくありません。

統合失調症の治療

統合失調症の主な治療は、向精神薬による薬物治療と心理社会的治療(精神科リハビリテーション)です。一般に急性期には薬物療法による治療が中心になりますが、症状の改善が進むにつれて、心理社会的治療の役割が大きくなってきます。治療の経過と回復の程度に応じて、薬と心のリハビリテーションをバランスよく組み合わせることが重要です。

(薬物療法)

抗精神病薬と呼ばれる薬による治療が中心になります。この種類の薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えてくれる効果があり、これによって幻覚や妄想などの精神症状の改善が期待できます。その他にも、症状に合わせて、不安や抑うつを和らげる薬、睡眠を助ける薬などを併用します。
最近の薬は改良が重ねられ、副作用が少なくなってきています。しかし効果が十分に現れるには時間がかかるので、一定期間は飲み続けることが必要です。
さらに抗精神病薬には症状がまた悪くなるのを予防してくれる働きがあるので、調子がよくなった後もすぐには止めずに服薬を続けることが必要です。

(心理社会的治療(精神科リハビリテーション))

心理社会的治療(精神科リハビリテーション)とは、社会生活を安定して送る上で必要な能力(社会機能)の向上を目的として行われる治療・援助です。たとえば、自立生活のために必要な対人関係のストレスに上手に対処するスキルの獲得、病気のために低下した記憶力や集中力の改善、病気を理解し上手く療養を継続していくための学習など、様々な目的に対応したリハビリテーションプログラムが行われています。
これらのプログラムは病棟や外来、デイケア、作業療法センター等で行われます。また心理社会的治療は、医師や看護師、PSW(精神保健福祉士)、作業療法士、心理士、薬剤師など多職種スタッフにより行われるのが一般的です。ですから担当スタッフと一緒に、いつからどのようなリハビリテーションプログラムを利用するのがよいかをよく相談することが大切です。

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