うつ病とは、「ゆううつで気分が晴れない」「何事にもやる気がでない」といった症状が1日中続き、気分の切り替えができない状態が一定期間以上続く こころの病です。種類としては、症状が長く続き、気分の沈みを繰り返す「大うつ病」、気分が上がる躁状態もある躁うつ病、冬場などの特定の時期になる「季 節型うつ病」、女性が出産後に発症する「産後うつ病」などがあります。 1990年代後半では44万人程度だった患者数が、2008年には104万人と増加しており、一般的に女性に多いと言われています。若い世代だけでなく、40代~60代の中高年層も多く、社会的・経済的な影響が大きいと考えられています。
うつ病の治療
うつ病の一般的な治療は「休養」「薬物療法」「環境調整及び精神療法」の3つが柱となります。
(休養)
休養はうつ病の方にとって、とても重要な治療です。「うつ」はこころのエネルギーが少なくなってしまった状態、車で言えばガソリンが減ってしまったような 状態にたとえることができますので、それ以上はアクセルを踏まず、エネルギーの補給のためにゆっくりする時間を持つことが必要になります。これは決して怠 けたり、サボったりしているわけではないので、周囲の方も、休養が治療上必要であることに理解してあげることが重要になります。
(薬物療法)
薬物療法は「抗うつ薬」という種類の薬による治療が中心になります。抗うつ薬にはSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノ ルアドレナリン再取込み阻害薬)などの種類があります。また、不安症状の強い方には抗不安薬を、不眠が認められる方には睡眠導入剤なども併用します。
また、躁状態を経験したことがある人、つまり躁うつ病(双極性障害)と診断された場合には、気分安定薬と呼ばれる種類の薬が用いられます。
どの薬が効くかはひとりひとりで異なりますし、また同じ人でも病気がどの段階かによって効果が違ってきます。また抗うつ薬は、すぐに効果は現れず、効果が 出るまでに2~3週間かかることが一般的ですので、処方された薬の、量と回数をきちんと守り、正しく飲み続けることが大切です。
(環境調整及び精神療法)
環境調整とは、うつ状態を起こす原因や環境要因がはっきりしている場合、それを取り除くよう試みることです。職場を例にあげれば、業務量が過剰だったり、上司や同僚との人間関係に悩んでいたりする場合には、仕事内容や配置を代えてみることを職場で検討して頂きます。
精神療法には様々な方法がありますが、最近は、「認知行動療法」が注目されています。認知行動療法とは、ある出来事を経験した際の自分の気持ちや行動を振 り返りながら、極端なものの考えをしていないかどうか、他の見方や解釈の仕方はないかを治療者と一緒に考え、心の安定を図っていく精神療法です。
具体的には、生活上の出来事と、そのときの考え方のパターンや気分を記録し、他の解釈や考え方を検討し、それによってどのように自分の気分が変化するかをみていく、というような流れで治療が進められます。
再発防止・早期発見の方法
うつ病も再発を繰り返すことのある病気ですので、再発を防ぐための手立ては大切です。そのためには回復後もしばらくは通院や服薬を続けること、ストレスをためないよう十分に睡眠を確保し、ささやかでも何か趣味や楽しみを持つこと、などが有効です。
また早期に発見するために、もし「うつかな?」と心配になったら大きな病院だけでなく、まずはご近所のメンタルクリニックで治療をうけるのもよい方法ですし、お住まいの精神保健福祉センター、保健所、市町村役場で「こころの健康相談」があれば、それを利用してアドバイスをもらうのもよい方法です。